越前市内の二つの”モノづくり企業”に勤める社員たちに取材してわかったことは、越前市は、他の地方都市と違って、安定的な雇用があり、子育ての環境も整っているなど、潜在的なポテンシャルがあることだ。総じて市の現在の環境に大きな不満は感じていない。ただし、中心市街地の活性化は必要だと考えている。中田氏は、「中心市街地の空いているところに高齢の親世代が住むことができる住宅や福祉施設を市が整備してはどうか。親世代ごと若い世代が移住できる環境を整えれば、都会からも移住しやすくなるのではないか。市の税収が増えれば、市民へのサービスもさらに向上する」と熱心にアイデアを話す。確かに、定着人口を増やすカギのひとつは、市街地の活性化と言えるだろう。
現在、市では中心市街地の活性化計画に取り組んでいる。武生駅を含む約1km四方、約123haのエリアを設定し、空き家のリフォーム費、住宅取得、新婚世帯の家賃補助など、中心市街地への移住を促す事業を行っている。同時に、総社大神宮、古い街並みが残る「蔵の辻」、指物職人が集まる「箪笥町」など、エリア内の各地区がもつ魅力を生かす活性化を目指していく。
最後に、越前市の企業で働く人たちに、地方創生の動きをどのように捉えているかを尋ねた。皆、大都市への人口集中の一方で、地方の過疎化が進む日本の現状には、危機感を覚えているという。中田氏は、「地方創生には大賛成。地方は都会と比べて、人と人のつながりや個人の人間力が高いと思う。いかに地方の力を活用していくかが、今後の日本にとって重要なのでは」と語っていた。
(構成・文:飯田彩)