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「スポジョブ」の地でホッケー選手と仕事を両立

スポーツが縁でモノづくり企業と出会い、その支援を受けながら、国体を目指す社会人アスリート・土井美里さん。
越前市にはそんな土井さんのようにかんばる人を全力でサポートする度量の広い企業がひしめいている。

土井美里さん(24歳)●ふじや食品・商品企画開発室

 共働き率全国ナンバーワン(※)で、かつ出生率も全国上位を維持するなど、女性が産みやすく働きやすい環境が整っていることで有名な福井県。その中でも中央部に位置する越前市は、女性の就労や子育てについて、とりわけ手厚い支援体制があることで知られている。

 さらにこの街には、県を代表するアスリートを応援する“熱い”企業が多数! みんなの声援を受けて、仕事にスポーツに邁進する土井美里さん(24歳)に、越前市で働くことの魅力を聞いた。

アスリートを応援する風土

 子供の学力・体力ともにトップクラスの福井県。2015年度の「全国学力テスト」では、各教科の平均正答率(公立校)が小6・中3ともに全10教科がすべて4位以内。同じく15年度の「全国体力テスト」では小5男女・中2男女ともに2年連続で1位を独占。

 こうした好記録を打ち立てられる理由の一つが、行政の支援体制。その恩恵を受けているのは子供たちだけではない。福井県は平成30年に開催される「福井しあわせ元気国体」に向けた活動「スポジョブふくい」を実施。有力な選手を「チームふくい」のメンバーに認定し、県内で働きながら競技力の向上を目指せるよう、県をあげて社会人アスリートをバックアップしているのだ。

 この制度を利用して、越前市にある食品メーカー・ふじや食品に就職したのが、国体への出場が期待されるホッケー選手の土井美里さん。土井さんは、越前市のお隣、鯖江市に住んでいた中学生の頃にホッケーに出合った。

 「友達に誘われてホッケー部を見に行ったら、すごく活気があって楽しそうだったんです。顧問の先生も若くて情熱的だったし、どんなスポーツなんだろうと好奇心があったのでホッケー部に入部しました」

 中学時代から頭角を現した土井さんは、高校、大学とホッケー推薦で進学。大学では女子ホッケー部のキャプテンを務めた。そして2015年、「スポジョブふくい」を利用し、ふじや食品への就職。それを機に住まいも越前市に引っ越した。「気がつけば人生の半分はホッケーをしています。進学も就職もホッケーのおかげ」と、土井さんは笑う。

“二足のわらじ”を続けられる思いやり職場

新商品の試作や開発に携わっている土井さん。はじめの頃はお料理教室に通っている気分だったものの、いろいろと任されるようになるとともに、すごい仕事をしていると実感することも。「バイヤーさんの細かな要望にも応えられるよう試作を繰り返しています」(土井さん)

 ふじや食品は、全国屈指のチルド食品メーカー。主力商品は玉子どうふや茶碗蒸しなどで、6つの営業所と2つの工場があり、独創的な商品開発力を武器に全国のスーパーなどと取引をしている。土井さんは商品企画開発室に配属され、主に新商品の試作や開発に携わっている。例えば、大手小売業のバイヤーから「プライベートブランドでこんな味の茶碗蒸しを出したい」と依頼を受けたら、試作と試食を重ねてイメージ通りの味を作り上げ、それを量産化するためのレシピを考案する仕事だ。

 「実は卵が苦手で、生卵を触るのにも抵抗があったので、配属が決まった時はやっていけるかどうかすごく不安だったんです。しかも最初は茶碗蒸しなどを作る練習ばかりでしたから、まるで料理教室に通っているようで……(笑)。でも幸い、卵にはすぐ慣れることができました。今は、スーパーで私が携わった商品をお客さまが手に取っているのを見るとうれしくなるし、『重要な仕事を任されている』と、あらためて責任を感じています」

 就業時間は8時45分から17時半。現在はホッケーのシーズン中のため、土井さんは月・水・金曜は20時から22時の練習に参加する。試合数は年間10回程度だが、大きな大会に出場するときは移動も含め、ほぼ1週間は会社を休むことになる。

 「会社が私の事情を理解してくれているので、本当にありがたいです。それでも、お休みすればどうしても周囲の方に負担をかけてしまいます。だからその分、普段はやるべきことは責任をもってやり遂げることを心がけています」  今年も土井さんに続き、男子の弓道選手が県外からふじや食品に入社した。社会人アスリートが生活を安定させながら夢を叶えられるという豊かな土壌が、この越前市に育まれつつある。

アスリートとしての夢、女性としての未来

 アスリートとしての生活と仕事を両立させている土井さんには今のところ、まとまった休みを取る余裕はない。貴重な息抜きとなっているのは、車で20・25分の通勤時間。

 「越前市は周辺の街と比べても、広々としていて自然が豊か。ホッケーに仕事にと慌ただしくしていても、車窓からちょっと景色を眺めるだけでリラックスできます。とくに気に入っているのは、通勤のときに通る堤防沿いの道。春に見た桜並木は本当にキレイで、もううっとりしてしまいました」

 つかの間の開放感を味わいながらも、土井さんの視線の先には常に2018年の「福井しあわせ元気国体」がある。

 「地元開催の国体は、これまで応援してくれた人たちみんなに見てもらえる貴重なチャンス。だからこそ、絶対に出場したいんです。それに国体の頃、私は世代交代を考えるべき年齢になっています。もしかしたらこの国体が、私の最後の試合になるかもしれません」

 国体後に現役を続けるかどうかは未定という土井さんだが、女性としてのライフプランはすでにしっかりと描いている。

 「国体が終わったら結婚もしたいし、子どももほしいですね。最近、育休を終えて職場に復帰した先輩がいるのですが、その方を迎える職場の雰囲気がとても温かくて。今はアスリートとしての私を受け入れてもらっていますが、この職場ならママになっても安心して働けそうだと実感しました。スポーツをしながら、今の暮らしも未来のこともちゃんと考えられる。こんな職場に巡り会えるなんて、すごくラッキーですよね」

「風通しのいい職場に」という社長の思いが社員に伝わり、どの部署の人とも和気あいあいと仲がいいという。他部署の人も交えて試食することもあるそう

福井県越前市で働く

越前市の小中学校では食育にも力を入れている。市内の全小学校と中学校1校では、自校直営の給食を実施、地場食材を取り入れたバランスのよいメニューが提供される。中学校ではITを活用した給食「スクールランチ」を導入。自分でメニューを選択することで食に対する意識を高める狙いがある。

>越前市の子育て・教育はこちら

取材・文:市原淳子  撮影:新山貴一(ブロウアップスタジオ)
* この記事の年齢、役職などは取材時のものです
※ 福井県の共働き率56.8%、全国平均45.4%(総務省「平成22年度国勢調査」より)

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