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子育て支援の厚い越前市。男性育休取得率の高い職場

日本有数のモノづくりの町、越前市。
なかでも、活気あふれる雰囲気が決め手となって就職した企業で、やりがいのある仕事と2人の子育ての両立に励む。

泉 佳恵さん(30歳)●キョーセー・生産本部

 共働き率全国ナンバーワン(※)で、かつ出生率も全国上位を維持するなど、女性が産みやすく働きやすい環境が整っていることで有名な福井県。その中でも中央部に位置する越前市は、女性の就労や子育てについて、 とりわけ手厚い支援体制があることで知られている。

 今回は、「社員の働きやすさ」を重視するモノづくり企業で働く泉佳恵さん(30歳)に、仕事や職場環境、子育て事情などについて聞いた。

社員がイキイキと働くモノづくり企業に就職

 就業している女性の場合、結婚、妊娠、出産、育児などライフステージの変化に応じて、常に二者択一を迫られる。仕事を続けるのか、辞めるのかと。ただ、続けることを望んでも子育て環境が整わず、断念するケースも多い。

 実際に、仕事を持つ女性が出産後に退職する割合は46.9%(国立社会保障・人口問題研究所「第15回出生動向基本調査 2015年」より)。つまり、半数近くの女性が出産をきっかけに離職しているのだ。

 こうした現状の中、越前市の企業で働く泉佳恵さんは、仕事をしながら家庭を持ち、会社を辞めるかどうか悩むことなく2人の子どもを出産し、現在子育ての真っ最中。仕事と家庭を両立する望みどおりの日々を過ごしている。その鍵となっているのは勤務先であるモノづくりの会社、キョーセーだ。

 越前市に隣接する鯖江市で生まれ育った泉さん。「高校卒業後はすぐに働きたい」との思いから福井市にある県立の商業高校に入学。ビジネスでの実践力を身につけるべく、情報システム科でコンピュータの専門知識などを学んだ。

 就職活動では、学校に求人があった2つの会社を見学。そのうちのひとつがキョーセーだった。同社は異形押出成形という技術を用い、プラスチック製品の研究開発、製造、販売を手がける総合メーカー。住宅関連部材を中心として照明部材、車両部材、店舗部材など幅広い分野に製品を提供している。

 「若い社員が多く、活気があって楽しそうだなというのが第一印象でした。希望どおり事務職で採用されればパソコンの技能も活かせるので、ここに入社したいなと。労働組合があるのも志望理由のひとつでした」

 泉さんの入社年である2007年は、団塊世代の一斉退職の影響により求人数が増加し、キョーセーでも20人近くを採用。泉さんもそのひとりとなった。

キョーセーが提供している製品の一部。住宅関連部材を中心に、家電、照明、車両、オフィス、店舗など用途に応じた意匠性と機能を優先したプラスチック押出成形を行なっている

きちんと機能する育児支援制度で就業を継続

 入社後の配属先は生産本部。技術部門や製造部門などから成るモノづくりの要となる部署で、受注した製品を納期までに効率よく生産することが求められる。この部署で事務を担う泉さんの主な仕事は、同社に4つある工場の各工場長と生産本部本部長を補佐すること。工場の実績集計など、工場長や本部長の手が回りにくい事務作業をサポートしている。

 なかでも「一番苦労するのはISOに関する資料作成です」と泉さん。同社は製品品質や環境に配慮した企業体制を目指し、ISO(国際標準機構)9001と14001を取得しているが、数年に1度内容が改正される。その都度、資料を作成し直すのも泉さんの仕事だ。

 「法規制なども関わってくるので難しいのですが、この仕事をしているのは私ひとり。仕事の合間に勉強して、なんとか理解できるようになりました。苦労した分、ISOやその他の資料を作成し、工場長や本部長に“助かった”と言われると、とても嬉しく、励みになります」

 また、同社では意外なところからスキルアップのチャンスが生まれる。それは、育児支援制度を機能させる上での社員の多能化だ。社員の「働きやすさ」を重要視するキョーセーでは、出産後も継続して就業できるように育児支援に注力。制度を整えるとともに、産休・育休取得者の仕事をカバーするための対応策も講じている。それは、社員が他部署の仕事も担えるようにスキルを身につけ、休暇中の社員の仕事を複数人で分担するという方法だ。

 「この制度のおかげで、安心して産休・育休を取得できました。逆に、自分も製品検査員の資格を取得し、他部署に応援に行くこともあります。スキルが高まるし、いろいろ挑戦できるのは楽しいですね。仕事と子育てが両立しやすい職場環境なので、社内には同年代のワーキングマザーが何人もいますから、子どもの体調について相談したり、情報交換できたりするのも心強いです」

 また、キョーセーでは男性社員の育休取得者も多い。社内結婚の泉さんも2人目の出産時、夫が上の子の世話をするために1カ月ほど育休を取得した。この経験によって「夫も育児の大変さがよくわかったようで、より協力してくれるようになりました(笑)」と泉さん。副次効果も生まれたようだ。

「短時間勤務になったことで仕事のやり方を考えるようになった」と泉さん。社内には子どもを持つ女性社員も多く、ランチタイムは育児の情報交換で盛り上がる。

地域の施設を活用して楽しくのびのび子育て

 キョーセーの所在地である越前市も、昔から繊維産業が盛んで、女性も貴重な労働力だったという背景があり、子育て支援など女性が活躍するための制度が充実している。例えば、希望者全員が入園可能な幼稚園や保育園、地域子育て支援センターをはじめとするいくつもの相談窓口、子どもの医療費助成制度など妊娠から子育てまで手厚いサポートが受けられるのだ。

 また、越前市には子どもをのびのびと育てられる施設も整っている。

 「なんといっても、だるまちゃん広場ですね。広々とした芝生の空間やアスレチック広場など子どもたちが喜ぶ遊び場がたくさんあって、親子で思いっきり遊べるのが魅力。休日は頻繁に通っています」

 泉さんが絶賛する「だるまちゃん広場」は、越前市出身の絵本作家、かこさとし氏が監修し、作品の世界観をコンセプトにした公園だ。広大な敷地には、水遊びができる宇宙をテーマにした平面噴水や「ふわふわ雲」と呼ばれる巨大なトランポリンなど、子どもが夢中になる仕掛けがいくつもあり、地域住民に大好評だ。

 周囲を山々に囲まれた越前市は、自然に恵まれていることも特徴のひとつ。子育てに最適な環境であることはもちろん、泉さん自身も「会社の窓から見える山を眺めることで、忙しいときも癒される」という。

 「今は、4歳と2歳の子どもの保育園の送迎があるので、9時から16時までの短時間勤務制度を利用しています。毎日慌ただしく大変ですが、子どもの急な病気などで突然休まなければならないときも職場の上司や家族に助けられ、仕事を続けることができています。私としても、どうしたら仕事を効率化できるか考えながら工夫を重ね、これからも子育てと仕事を両立していきたいです」

『だるまちゃんとてんぐちゃん』をはじめ、かこさとし氏の絵本をモチーフにした遊具が子どもの好奇心をくすぐる「だるまちゃん広場」。変化に富んだ大型アスレチックは子どもに大人気

福井県越前市で働く

越前市には、認定こども園と保育園が私立・公立合わせて計24園ある。認定こども園とは、幼稚園と保育園の両方の機能をあわせ持ち、地域の子育て支援も行う施設のこと。保育園では通常の保育のほかに、延長保育、休日保育、一時預かりなどがあり、柔軟な対応で働くママやパパを応援する。

>越前市の子育てについてはこちら

取材・文:後藤かおる  撮影:田中勝明
* この記事の年齢、役職などは取材時のものです
※ 福井県の共働き率58.6%、全国平均48.8%(総務省「平成27年度国勢調査」より)

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